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 左は改造前。高さ60cm。

 右は改造後。高さ45cmです。これで、車内の「適切な」場所に置くことができるようになりました。

 ここでは、どうやって低くしたのかを紹介しようと思います。

 CORONA社の「どこでもクーラー」を改造してみました。

 車中泊をするのに、暑い季節の夜でも車内で快適に過ごすためにクーラーが欲しくなりました。車中泊中はエンジンを止めるのが基本で、車のエアコンが使えないからです。

 車はハイエース。車内の高さは1.5mほどありますが、いろんな物を積み込んでいるために、高さが60cmある「どこでもクーラー」を置く適切なスペースがありません。

 そこで、「どこでもクーラー」の高さを低くする改造をすることにしました。

 「どこでもクーラー」は改造するつもりでしたから、中古品をできるだけ安く手に入れることにしました。オークションで落札したのは2006年製。10年前のものです。フィルターの一部が欠けているうえ、写真のようにゴミだらけのシロモノです。

 でも、冷えることだけは確認してあります。

 まず、左側面(本体に向かって左側)のカバーを外します。左側面と背面に見えるビスをすべて取り除くだけで、簡単にカバーを外せます。

 次に、写真の2か所の矢印の付近の奥に右側面のカバーの上部を留めているビスがありますから、長い+ドライバーを差し込んでビスを取り除きます。その際、「帯磁ドライバー」でないとビスが取り出せません。

 右側面の残りのビスも取り除いて、右側面のカバーを外します。これで、すべてのカバーが外せます。

 右側面(本体に向かって右側)に冷却部があります。ここは結露を起こすので、ひどい汚れです。「竹ブラシ」を使って汚れをこすり取り(「フィン」に沿って、まっすぐに動かします)、プラスチックのへらを使って「フィン」の曲りを修正し、「水受け」の部分に布を差し込んで掃除をしました。最後に、「エアコン洗浄スプレー」でシューッとやりました。

 左側面は放熱部。こちら側もひどい汚れです。右側面と同様に汚れを取り、「フィン」のゆがみを修正しました。

 外したカバーや部品を、中性洗剤で水洗いしました。中古品とは思えないほど、きれいになりました。

 コンプレッサーを、本体の下に横向きに納めるために、冷媒が通る銅管を曲げます。銅管は柔らかいので、簡単に曲げることができます。

 その際、すでに曲がっている部分には力が加わらないように注意し、まっすぐになっている部分を、できるだけ大きな弧を描くようにゆっくりと曲げていきます。急な角度で曲げないようにすることが肝心です。

 このコンプレッサーは、本来は縦位置で動作するものです。これを、このように横位置にしてうまく動くのか心配ですが、とにかく、高さを低くするためにはこうするしか仕方がありません。

 コンプレッサーの底の部分には、写真(左)のように、「底板」に固定するための「耳」が3つあります。これが出っ張っていて邪魔ですから、写真(右)のように、2か所を切り取りました。この部分はかなり厚い鉄ですから、電動の工具を使いました。

 このままでは、本体を持ち上げたときにコンプレッサーが落ちてしまいますから、結束バンドとテグスで引っ張り上げるようにしました。コンプレッサーと本体との間に少しの余裕をもたせるよう、ゆるい目に引っ張っています。

 いよいよ、高さを低くします。カバーを仮留めし、カットする位置を決めて、金切りノコギリで切っていきます。排水タンクのカバーの部分は、ツメを外せば取り外すことができます。これも、高さを決めてカットします。

 後ろのカバーの下の一部を切り欠き、電気コードを引き出す部分を作りました。

 また、排水ホースを通す穴が左側面に設けられているのですが、これではホースが横に突き出て具合が悪いので、本体の後ろからホースが出るように穴をあけました。

 オークションで競り落としたとき、この商品にはダクトがついていませんでした。本来ついているはずのダクトは、布製で柔らかく、折れ曲がってしまうので使うつもりはありませんでした。使う予定のものは、ホームセンターなどで売られている直径100mmのアルミのダクトです。

 そのため、ダクトのアダプターを作る必要があります。写真(上)は「クーラーキャップ」という商品で、アルミのダクトと一緒に売られています。

 本体の後ろにダクトのアダプターを差し込む部分がありますから、これに合うようにクーラーキャップを加工して、ダクトが取り付けられるようにしました。

 「どこでもクーラー」を置く位置は、運転席の真後ろです。棚板が作ってあって、電子レンジと衣装ケースを載せています。棚板から天井までは55cmほどで、60cmの高さの「どこでもクーラー」は置くことができません。この棚板の上に置くために、高さを低くする必要があったのです。

 写真は、運転席を前にずらして、助手席の方から見たものです。直径100mmのアルミのダクトと排水のためのホースが見えます。

 ハイエースの運転席の下には、寒冷地仕様車のために、追加のバッテリーを置くスペースが設けられています。そのスペースには鉄製の蓋がありますから、それを外します。蓋を外すと、底にも鉄板があります。この鉄板はボルトで固定されているだけですから、これも外すと地面が見えます。

 つまり、「ダクトと排水ホースはここを通せ」と言わんばかりの穴が開いているのです。

 写真は、車の下から見上げたものです。ちょうどうまい具合に、ダクトと排水ホースが顔を出しています。

 ダクトの先には、虫などが入らないように、網を取り付けました。

 写真(左)は、室内(荷室)側から見た様子。写真(右)は、右側のサイドドアを開けたところです。棚の上に載せているものは、すべてベルトで引っ張って固定しています。

 写真(左)の「どこでもクーラー」は歪んで見えますが、少し内側に向けて斜めに置いています。その結果、クーラー本体の左側面(向かって左)と衣装ケースとの間に、運転席方向に開いた空間ができます(3つ上の写真を見るとよくわかります)。こうすることで、左側面の吸気部分には、室内(荷室)側の空気ではなく、運転席のすぐ後ろの空間からの空気が入ります。

 この「運転席のすぐ後ろの空間」はダクトの周囲を経て外部につながっています(ダクトの周囲は密閉しないで、隙間があります)。この「外部からの空気を取り込んで、外部に排気(排熱)する」という流れを作ることで、左半分が「室外機」の役割を果たしています。

 一方、右半分は「室内の空気を取り込んで冷却し、正面から吹き出す」という「室内機」の役割を果たしています。

 本体の下側には、排水タンクがセットされているかをチェックするスイッチがあります。排水タンクが正しくセットされると、写真(左)の白いプラスチックが上向きに押されスイッチが入ります。

 このプラスチックは引っ張ると簡単に外れ、写真(中)のようにマイクロスイッチの金属部分が残りますから、これが、常に上向きに押された状態になるようにします。こうすることで、排水タンクがなくても、電源が入るようになります。

 写真(右)のように、この白いプラスチックを利用して、スイッチが上向きに押された状態になるようにして、テープで固定しました。

 排水タンクの後ろの部分にコンプレッサーがあり、これを「底板」から外します。手前の2本のビスは簡単に取り除けますが、奥のビスは上の「本体」が邪魔で、このままでは取り除けません。

 そこで、「底板」を両足で押さえつけながら「本体」を思い切って上方に引っ張ると、「つめ」がはずれて持ち上げることができます。そのまま反時計回りにひねると、写真のように、コンプレッサーの後ろにドライバーを差し込む余裕ができますから、3本目のビスも取り除けます。

​​​​​​​​ 排水タンクは必要ありません。ホースで直接車外に排水します。また、今回の改造は高さを低くすることが目的ですから、「底板」を含む下の部分も邪魔です。

 不要な部分をすべて取り除くと、写真のように、コンプレッサーがぶら下がった状態になります。このままでは使えませんから、これを本体の下にできるだけ近づけて、コンパクトに納めることにします。

 できるだけ高さを低くするために、底板をつけないことにしています。そのため、コンプレッサーは、「どこでもクーラー」を置く台の上に直接載り、大きな振動音がすることになります。そこで、もともとコンプレッサーの「耳」の部分についていたゴムを、写真のように取り付けました。これで静かになります。

 コンプレッサーの下にはトレイを置いて水をためるようにしました。たまった水は、コンプレッサーに巻きつけた布に吸収され、次々と蒸発してコンプレッサーを冷やすことになります。

 たぶん、水があふれることはないと思っているのですが、もし、たくさん水がたまるようなら、このトレイに排水ホースを取り付ける予定です。

 以上で、ひとまず完成です。肝心の冷え具合はどうなのかということですが、室内機側の吸気部(向かって右側)の気温に対する正面吹き出し部の気温は、約-7.5℃です。メーカーが表示している-10℃という値にはなりません。原因として、

 1。この商品は10年前の製造で、冷媒が抜けてきているのかもしれない。

 2。ダクトの長さが1.5mほどあり、ダクト内面での排気の空気抵抗が無視できない。

 3。コンプレッサーを横置きにしている。

などといったことが考えられます。

 次に、コンプレッサーに布を巻きつけ、この布にドレン水(排水ホースで車外に出していた水)をかけるようにしました。布を水で濡らし、その水の蒸発熱でコンプレッサーを冷やそうというわけです。つまり、水冷式にするのです。

 蒸発した水蒸気は、上記の「放熱部につながる穴」から吸い込まれ、ダクトを通って車外に出ていきます。

 この「どこでもクーラー」は、多くの人が「クーラーとしては期待外れ」という評価をしておられる商品です。消費電力が200W余りと小規模なのですから、もともと、ガンガン冷えることを期待できるものではありません(本来は、除湿機です)。それでも、

 1。車内の後方部はぴったりと閉めきっていますから、「すきま風」が入ってきません。

 2。せまい車内ですから、冷気は後ろの方まで届きます。

 3。ダクトを使って、車外への排熱もできています。

 4。室外機と室内機の空気の流れを分離する形で設置しています。

などにより、まずは、満足ということにしたいと思います。

 もう一つ、手を加えました。本体後部の排気口には、もともと「格子」がはまっていました。中で回転しているファンに手などが触れないようにするための「ガード」です。

 しかし、ここには必ずダクトをはめますから、誰も手などを入れることはありません。そこで、写真(下)のように、この「格子」を切り取ってしまいました。排気の空気抵抗を少しでも小さくするためです。

 さらに改造を進めました。

 本体の下面には、いくつかの穴がありますが、それらのうち、写真に矢印で示した穴は冷却部につながっており、その他の穴は放熱部につながっています。

 つまり、コンプレッサーを冷やすため、本体の下にも空気の流れができるように設計されているのです。

 そこで、上記の穴のうち、冷却部につながっている穴(矢印の穴)だけをアルミテープやパテでふさぎました。

 こうすることで、コンプレッサーの周囲の空気は、冷却部には流れ込むことなく、残りの穴から放熱部だけに吸い込まれていくことになります。

 今回の作業をする中で気づいたことがあります。

◆ 冷風のモードには、「パワフル」「標準」「ナイト」の3段階がありますが、「パワフル」→「ナイト」となるにつれて、風量が少なくなるだけでなく「吹き出し口」の気温も低くなります。たとえば、「標準」から「ナイト」に切り替えるだけで、1.0~1.3℃程度下がります。

◆ 私のダクトは1.5mほどありますが、このダクトを外して本体の後ろから直接排気すると、吹き出し口の温度が0.3℃ほど下がります。ダクト内面の「空気抵抗」は、それほど大きくはなさそうです。

 ここで使用している布は、マイクロファイバーという極細の繊維を編んで作られているものです。本来は食器拭き用に売られているものですが、とてもよく水を吸い上げ、またよく蒸発させるのでここで使ってみることにしました。

 布を縦に吊り下げその下端を水の中に浸すと、20分ほどで高さ10cm程度まで水を吸い上げます。

どこでもクーラーの改造

​​【その1】

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