
スピーカーエッジの自作&修理

オーディオスピーカーのエッジがウレタンでできているものは、年月が経過すると写真のようにボロボロになってきます。ネットで調べてみると、エッジ修理用のキットが販売されていて、自分で直せるようです。
でも、ここではエッジそのものを自作し、「修理」してみることにしました。メーカーが設計したような音質に戻るのかどうかわかりませんが、やってみる価値はあると思っています。

今回修理したのは、KENWOODのLS-990HGという3ウェイスピーカーのウーファー(一番大きいスピーカー)です。30年も前の製造で、エッジ以外の部分は何の問題もないように見えるのに、エッジだけがひどい状態です。
スピーカーボックスからウーファーを取り出し、まず、ボロボロになったエッジをすべてきれいに切り取りました。

ゴム製の枠(ガスケットというのだそうです)を外しました。

ゴム製の枠の下に貼りつけてあった紙も、すべてはがしました。

ゴム製の枠の裏側に残っている紙も、きれいにはがしました。

コーンの裏側に残っている接着剤も、きれいに取り除きました。コーンはわりと硬くて丈夫な素材でできているので、マイナスドライバーやカッターナイフなどいろいろな道具でこすっても、破れることはありませんでした。

とてもきれいになりました。

ずいぶん手間と時間がかかりましたが、エッジ部分を徹底的にきれいにしました。金属部分には、ペイントうすめ液(シンナー)も使いました。


次に用意したのは、シーリングバックアップ材。建築関係で使用されているもので、断面が円形(直径16mm)になっています。
これを縦に半分に切り、断面が半円形になるようにします。

いくつかのサイトで、この作業をするのにカッターナイフを使う方法が紹介されていますが、どうもうまくいかないので、写真のようにはさみで切ることにしました。

ベニヤ板の上に、内半径118.5mm、外半径134.5mmになるように同心円を描き、これに合わせてシーリングバックアップ材を両面テープで貼り付けました。
この内半径と外半径の数値は、LS-990HGのエッジ部分のサイズです。

ベニヤ板に貼りつけたシーリングバックアップ材の両側に、糊を塗りつけました。

次に用意したのが、木綿のTシャツです。まだ使えそうですが、今回のスピーカーエッジの修理のために、「犠牲」になっていただきました。
「前身ごろ」と「後身ごろ」とに切り分け、2枚の布で2つのスピーカーエッジを作ります。

ベニヤ板に貼りつけたシーリングバックアップ材の上に、用意したTシャツをそっと置きました。ピンと張らないで、余裕を持たせて置きます。

シーリングバックアップ材の周囲に沿って、ヘラや爪でTシャツを押さえていきました。つまり、断面が半円形の「土手」のようになるよう、形を整えます。布が伸びた 状態にならないようにすることが大切です。

ベニヤ板に塗りつけておいた糊のおかげで、うまく形が整いました。


次の登場は、液体ゴム。初めは液体ですが、乾くと弾力のあるゴムになるという、不思議な物質です。
いろいろな色があります。ふつうは黒を使うところでしょうが、カラフルにしてみようと考えて、赤にしました。

絵の具のように、筆で塗っていきます。水性ですから扱いやすく、薄めて使うこともできますが、今回は原液のままです。
塗ってすぐはピンク色ですが、乾くと濃い赤色になるという、これまた不思議な物質です。

「乾かしては塗り」を繰り返し、3回重ね塗りをしました。
完全に乾いたらベニヤ板からはがし、裏側にも1回塗りました。

「土手」の部分の周囲の内側には5mm、外側には10mmを残し、リング状に切り取りました。スピーカーエッジの出来上がりです。
同じものを2つ作りました。

Tシャツさん、ごめんね。

コーン裏側の縁の部分に、ゴム用ボンドを塗りました。

作成したエッジ表側の内側部分(幅5mmの部分)にも、ゴム用ボンドを塗りました。

ボンドが少し乾いてべとつかなくなったら(つまり、溶剤がとんだら)、両者を貼り合わせました。コーンの裏側にエッジの内側を潜り込ませるようにして接着します。
その後、エッジの外側をアルミのフレームに接着しました。このときに大切なことは、「センター合わせ」です。コーンの中心部を軽く押したり戻したりしながら、「こする音」がしないことを確認します。

最後に、ゴム製の枠を取りつけました。本来は、この枠も接着剤で固定するものかと思いましたが、今回は、単に押し込んではめるだけにしました。

裏側の様子です。

スピーカーボックスに納めました。これで完成。赤い色のエッジもなかなかいいものだと思いませんか? ただし、ふだんはネットをかぶせているので、赤い色は見えません。
さて、肝心の音質はどうなのでしょうか? 私としては満足しています。
以上の「スピーカーエッジの自作&修理」は、B太郎さんのサイトに出会えたことで実現しました。B太郎さん、ありがとうございました。